責任者対談
無線技術の
進化と真価とは

アイコムを取り巻くビジネス環境は
どう変化していくのか?
無線通信はどのように進化していくのか?
その中でアイコムは
どんな未来を描いているのか?
営業と技術の責任者2人に、
アイコムのこれからについて語ってもらった。

K.Mさん
国内営業部 営業企画課
課長
入社後、九州営業所に配属。その後、大阪営業所、東京営業所を経て、現在、営業企画課に所属。「無線は一歩間違えば悪用できるもの。だからこそ道徳が求められる」。それを肝に銘じ、業務に取り組む。
I.Yさん
商品企画課
課長
5Gの技術者としての経験を生かし、現在、5G応用装置の開発企画およびデバイス調査、5G関連の通信キャリア事業者との技術交渉、同時に新規ビジネスに関する調査を担っている。

THEME 01

無線通信の意義と、
アイコムのプレゼンス

モバイル通信に不可欠なアナログ無線技術に
大きなプレゼンスを持つアイコム

無線通信は、遠く離れた人同士のコミュニケーションツールとして、モールス信号による無線通信にはじまり、音声電話通信に進化し、現在はデジタル技術と融合することにより、音声・映像・VR空間などの膨大な情報を伝送する道具として進化してきました。一方、有線電話やインターネットに代表される有線通信は、大容量で安定した通信が可能であるものの、モバイル(移動体通信)には適しません。モバイルでどうしても必要になるのは無線技術。難しい話は省きますが、無線通信はアナログ的な要素が強い技術です。そのアナログ無線技術を60年にわたって培ってきたところに、アイコムの強みがあります。

今後、5G、6G へと移動通信システムが進化していっても、コアなアナログの無線通信の技術は残っていきますよね。

そうですね。いま、インターネットでお話ししたり映像をやりとりしていますけど、それを電波として飛ばす時には必ずアナログの波に変わります。そこではアナログ無線技術が必須です。

アイコムはアマチュア無線からスタートし、その後はP2P(中継プラットフォームを経由せず端末間で直接通信を行う技術)の業務用陸上無線機で、プレゼンスを発揮してきました。たとえば、国際的なスポーツイベントで使用された無線機のほとんどはアイコム製。また、アイコムは総務省から災害派遣業務を請け負っており、災害時には無線機をアイコムの全拠点から迅速に被災地に運び、ライフラインが破壊されても運用できる通信手段として役立ててもらっています。一般の方々にはあまり知られていないと思いますが、アイコムの技術力は高く評価されていますし、社会への貢献度も高いんです。

私は子どもの頃からアマチュア無線機をいじり倒して遊んでいたんですが、当時からアイコムは世界初をどんどん叩き出していて、他社はアイコムを追いかけている感じで「すごいな」と思っていました。国内で初めてアマチュア無線機のトランジスタ化を実現したのもアイコム。また、少ない部品で多様な周波数をつくり出せるPLL回路の技術を開発し、トランシーバーを手で持てるサイズまで小型化したのもアイコム。さらに「高周波(RF)」の電子回路をIC化することにも尽力し、国内企業と協業して高周波を増幅する電子部品(RFパワーモジュール)の実現にも貢献しました。ちなみに「PLL」「RFパワーモジュール」は、携帯電話をはじめとするほぼすべての無線機の基本構成要素として、現在も活用されています。

携帯電話ネットワークを利用した通信インフラに着目して、「IP無線機」を開発したのも先駆けでした。

無線技術にこだわりつつも、無線機にコンピュータの機能を入れたりと領域をどんどん拡大していき、新しいものに挑んでいく。通信機メーカーでここまで広く対応している会社はアイコムぐらいだと思います。

THEME 02

今後のマーケットの展望

さまざまなシーンでネットワーク化が加速する中、
アイコムならではの事業を展開していく

デジタルトランスフォーメーションが進展する中、無線機に必要となるのは、さまざまな機器につながる仕組みです。現在、いろんな通信機器が出てきていますが、お客さまとしてはそれらをバラバラに使うのではなく、一つにまとめた方が管理・運用しやすいですよね。アイコムではすでに、そうしたさまざまな通信機器をつなげる仕組みはできあがっています。これからさらに必要になるのは、AIカメラや各種センサーの情報をダイレクトに無線端末につなげる仕組みづくりだと考えています。

その通りですね。デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、ネットワーク化する流れは止まりません。

無線+電話が融合した新たなコミュニケーション端末の実現も加速化するでしょうね。

ただ、すべてがネットワーク化してしまうと、災害時にインフラがダウンした際、通信手段が何もなくなってしまいます。だからこそ、やはりP2Pの無線機は残していかなければなりません。それはアイコムにしかできないことだし、そこに使命感も感じます。

アイコムが開発したIP無線機と従来無線機のハイブリット機『IP700』が好評なのも、インフラが途絶えた時のリスクに不安を抱いていたお客さまの思いにピタリと応えられたからだと思います。

お客さまのビジネスにおいて通信に関して何が足りないのか、何に不安を抱いているのか……、それは業界ごと、会社ごとに異なります。また、通信機器がどんどん多様化する中、その通信機器同士の間にニッチな部分もあって、その意味でニッチなマーケットの数がどんどん増えてくるのではないかと。そこを攻めていくのが、アイコムの方向性の一つだと思います。

たとえば、その先の未来では衛星を利用した端末が増加し、用途に応じた無線媒体が数多くリリースされることに。そうした時、一中小企業では衛星通信機器を購入できなくとも、アイコムの衛星通信端末の仕組みを活用すれば、複数企業で共有することができます。それも一つのニッチのあり方だと思います。

THEME 03

アイコムが注力するテーマ

無線機技術とその応用技術を駆使し、
可能性豊かで多様なニッチ市場に挑んでいく

先ほど話したように、ニッチなマーケットに注力していきたいですね。たとえば、何千億円という予算が組める大手企業では大規模なデジタルトランスフォーメーションが進んでいますが、中小企業や個人商店ではやりたくてもできません。そのようなお客さまに向けてコンパクトなデジタルトランスフォーメーションの提供をしていこうということで、開発を進めているところです。アイコムの技術力を生かし、端末とネットワークをうまく組み合わせれば、リーズナブルな価格のものがつくれると思っています。

そうですね。その際重要になるのは、アイコムの無線機器とお客さまの環境の機器を接続し、利便性の向上を図ることだと思います。

そうなると必然的に、これまでのように無線機を単品で提供販売し、お客さまの方で利用用途決定やシステムを構築していただく形のビジネス展開から、アイコム製品を最大限ご活用いただくことを目的として、当社がシステム提供・構築支援を行うビジネス展開へと変わっていきますね。

おっしゃる通りです。そしてアイコムに期待されているのは、設計から生産まで国内で行っていて、ニッチなマーケットや人それぞれに合わせた機能や使い勝手を実現した、繊細なものづくりだと思います。

同感です。先ほど、ニッチなマーケットがどんどん増えてくると言いましたが、そういうところに国内外を問わずフットワーク軽く挑んでいけるのがアイコムの強みだと思うんです。

加えて、これまで培ってきたさまざまな技術を応用し、これまでアプローチしてこなかった分野へのビジネス展開も今後の注力テーマです。たとえば、介護、ヘルスケアビジネスでの技術の活用やEV市場、エコ発電市場など、無線機技術だけでなく、無線機に付随する技術応用での活用が可能ではないかと考えています。いろんな意味で、今後、アイコム製品のユーザー層が広がっていく可能性は目の前に見えていますね。

とはいえ、トップ曰く、「会社を大きくするのではなく、会社の質を上げていく。そのために社員のスキル、モチベーションをどんどん高めて、会社をよくしていく」のだと。

儲けることが第一の目的ではなく、お客さまぞれぞれの課題や災害、人材不足などの社会課題の解決など、人の助けになるビジネスを追求するのがアイコムの目的なんですよね。事業の根幹には必ず、道徳がなければならない。それこそが、アイコムが連綿と継承している考え方です。そういう意味も含めて、“オンリーワンの企業”であり続けたいですね。

そうですね。アイコムの経営理念は、「コミュニケーションで創る楽しい未来・愉快な技術」。これからも人類を幸せにするために、社会に役立つ楽しくワクワクするような技術を追求する集団でありたいと願っています。